「エコール」


女の子限定の謎の寄宿学校のお話。


高い塀で隔離された森の中に、校舎(?)と5棟の寮があって、初潮を迎えるまでの女の子たちが年齢順に色分けされたリボンを付けて共同生活を営み、主としてバレエのレッスンなどする。
最年長の子だけは毎晩九時頃校舎に出向いていて、なにか特別な集会に参加しているらしい……新参の子の視点で、「エコール」の奇妙な空間がガイダンス的に描かれ、その後、二番目に年長の子が校長先生によるバレエ審査を受けるエピソードがあって、秘密の集会の内容と最年長の子の卒業をもって終わる。


ロリータ映画なんだけど、かわいらしいとかほのかにエロいとかいうこと以上に、性的に未分化な状態にあった子どもが、肉体的変化を経て大人になっていくということの生々しさとか、そういう変化が未知であるがゆえに畏れを抱くような感じとかが、美しい森での日々の裏に常に渦巻いており、全編通じてなんとなく情緒不安定な空気感を保ってるのはすごいと思った。


なんかムンクの「思春期」という絵を思い出した。
共通する主題だと思う。


そして、もう一つの主題として、ロリータというのはただ単に「女児の持つ幼年性ならではのセクシャルな魅力」というだけのことではなく、必ず「そういう女の子を愛好する他者」の存在が前提とされており、言ってしまえば「消費される」ことを前提とした特殊な関係性が、バレエのレッスンの本当の目的というところで暗示されているように感じた。そしてこの関係は、まさに塀の内と外の関係でもある。(ネタバレになってしまうので詳しく書かないケド)


そんなわけで、かなり面白い作品でした。どういう意図かよくわからないけど、水の映像とか水の音がなんとなく不安な雰囲気を演出するのに効果的に使われてて、全編を覆うこの妙な雰囲気を味わうだけでもこの映画を堪能したことになると思う。


ところでふと思ったんだけど、こういうのを日本でやるとしたら、女の子じゃなくて男の子の話になるような気がする。


多分、定式化したロリータはヨーロッパのものであって、日本におけるロリータはその無理矢理な模倣に過ぎない。(だって、芸術性が高いといわれているロリータ写真集「少女アリス」でも、カメラマンは日本人なのにモデルは白人だし)


でも、そのヨーロッパのロリに並立するかたちで、アジアには男児の同性愛的なエロチックがあると思う。例えば、映画「さらばわが愛」の京劇役者養成学校における男児たちの風景とか。


確かに、欧米のゲイ小説にも少年モノはあるけど、それは多くの場合、少年の相手をするマッチョな青年との対比において登場してその肉体的な充溢に憧れるだけの存在であり、男児ならではの「性的未分化」の魅力にはまったく焦点を当てていない。


女児愛好(ロリコン)に対置するものとしての男児愛好が、「ショタコン」と呼ばれているのも、欧米には「正太郎」にあたるエロいキャラがいない、もしくは、いてもエロいキャラとして消費されたことがないってことなんじゃないかな。
男児愛好に関しては、アジア優勢という説。


ジャニーさんはタイに進出したけど、「ジャニーさんは欧米にも進出できるのだろうか?」と問うてみるのもおもしろそう。

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