崖っぷちの憲法9条守るためにノーベル賞でもなんでも使え、に大反対


手短に。


崖っぷちの憲法9条を守ろう! 安倍晋三から憲法を守るために、憲法9条にノーベル平和賞を! 受賞者は9条のもとこの戦後70年(くらい)一度も戦争をしなかった日本国民だ! まあ授賞式に揚々と安倍晋三が行ってみるのもいい。いくらヒトラー安倍でもノーベル平和賞をとった憲法をやすやすと変えることはできなくなるだろう。


こんな運動があり*1ノーベル賞の候補として正式にノミネートされたとかなんとか。


すでに批判も多く今さら私が付け足すこともないですが、私も、こんなのどうしようもないとしか思えない。
ここで私が強調したい立場は、そんなウソまみれではだめだということです。日本の戦後70年史が戦争と無縁だった、平和国家だったというのは端的にウソです。このへんについては「反日の会」ぶろぐの以下の記述に同意します。

 日本は、明治以来、侵略戦争と植民地支配を行ってきました。そして1945年以降も、再軍備を行い、アメリカとの同盟関係のもと、朝鮮戦争からイラク戦争、各地でのPKOにいたるまで、公然と戦争参加を行ってきました。沖縄には米軍基地を押しつけています。この否定しようのない事実をうやむやにするのは、歴史修正主義・現在修正主義です。


また、「集団的自衛権」と対比されるものとしての「個別的自衛権」なるものを容認する空気が反戦運動のなかに広がりつつあります。しかし、自衛隊の存在を認めた時点で、9条はまさに壊れています。


私たちは、戦後日本体制を「守るべきもの」としてとらえるのではなく、帝国主義植民地主義の継続として打倒することを目指すことによって初めて反戦運動を出発させることができるのではないでしょうか?

http://d.hatena.ne.jp/hannichi/20140408/1396933790

予想される反論 ↓*2

「戦争協力」と「戦争(とりわけ戦闘)」を一緒にするな。雑な議論だ。

9条の抑止力なめんな。

戦争もなめんな。9条やめると「本物の」戦争がくるぞー!

9条によって避けることができた現実を細かくよく見つめろ(そうすれば君も9条のありがたさに気づくだろうし、そうなればこの9条崖っぷち状況でなりふり構わないことだってそうそう批判できるものじゃない)。

戦争協力と戦争のちがいを細かく見つめろ。銃弾提供も給油も戦そ……かもしれないが戦闘じゃない。殺してるのはよそだ、うちらは後方支援のみ。この違い大きいぞ!!

条文改憲解釈改憲はちがう。
まだまだまだまだまだまだ平和国家だ!





冗談はやめたほうがいい。


こんな風に虫めがね使ってやっと見分けられる違いを探してる姿勢、これが解釈改憲そのものだ。9条の抑止力、平和国家の看板にのみこだわりいいとこ探ししてるうちに、

1. 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
2. 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。

この条文をせいぜいが「直接戦闘をしない」程度にまで切り縮めてしまったのだ。この現実で崖っぷち9条の意義を強調することは解釈改憲を擁護することでしかない。戦後の平和国家日本の欺瞞に向き合わず、大江健三郎のように堂々と「67年の平和主義」を厚顔にも謳う*3か、「それでも9条はすごかったんだ」と虫めがね片手に繰り返すか、もうどっちもどうしようもない。確かに解釈改憲に対して反対する声はあったし、結果として後退状況ではあるけれどずっと反対してきたのかもしれない。でも現実把握、危機感について言うなら、この崖っぷち9条のよかった探しはもう限界としか思えません。そんな現実にきています。


さて、またこの戦後67年史は周辺国にはどう映っているか? 「周辺国」とはあれだ、「反日国家」だとか、もっと最低なネットジャーゴンの「特亜」などではない、日本帝国とその臣民長年にわたって蔑視し、ときに敵視してきた国々のことだ。


戦後日本が地位協定まで結んで沖縄島の米国軍事基地を必死で守り*4、日本国自衛隊にしてもイージス艦を6隻も所有し(アメリカに次いで世界2位!)、去年の夏には機能も見た目も空母そっくり! の自称「護衛艦」が進水式を終えた*5。この軍事力の充実っ! 書店には「こんなに強い自衛隊」とかいう本が並んでるし。


こんな有様で「憲法9条をいただく平和国家でござい」てハァ?としか。とりわけ朝鮮民主主義人民共和国に対しては日米韓合同軍事演習など軍事的威嚇を繰り返し軍事的に包囲し、外為法*6と入港禁止措置*7による独自の制裁を実施。国内の朝鮮学校に対しても明白な差別措置。こんな有様で「憲法9条があったからこの程度済んでるんですノーベル賞欲しいです」て、そんなこと本気で言うんですか?


憲法9条も骨抜き、「平和賞」も看板だけのでたらめ、ウソまみれ。崖っぷちだからって瀬戸際護憲運動でウソいっぱいついて戦後日本美化して、そういうウソまみれでなんとか崖っぷちの9条が残ったとして、まあそれでもあった方がいいのかも……とは思ってしまわなくも。でも勇気を持ってそんなものに意味はない!と言いたい。


こんなことをやめて戦後史を正しく見つめ直すしかないと思います。今やってる戦争協力も「あれは戦争だからしない」と言ってしまいたい。
事実を見つめないと、その先になにをすべきかも引き出せない。それはみんな知っており、例えば日本軍の戦時中の行為にしても、ウソまみれでなかったことにしないと責任が生じてやばい、という感覚が共有されてる。この安倍政権をなんらかの危機ととらえるにせよ、原則的な立場から力強く反対していくべきだと改めて思った。

*1:https://www.facebook.com/nobelpeace9jou 安倍晋三がもらいに行ったら、てとこまでこの実行委が主張してるかどうかは確認してません。よって、「こんな運動」は上の段落の「〜日本国民だ!」までを指すということにします。

*2:似たようなのは実際にtwitterであった。URL貼るほどでもないと判断した。

*3:http://www.labornetjp.org/news/2014/0408shasin

*4:基地機能拡大に抗議する島民はスラップ訴訟で追い立てる有様だ

*5:http://www.asahi.com/articles/ASFDT5KFRFDTUTIL03D.html

*6:外国為替及び外国貿易法

*7:特定船舶の入港の禁止に関する特別措置法